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著者解説『新入試評論文読解のキーワード300』

評論文読解のキーワード「世界」

1-2-1「世界」

——ここでは、「世界」と「世界観」についてお話します。

宇宙

ⅰ)宇宙論

 「世界」とは、私たちが生きて暮らしている、まさに〈ここ〉です。
 その世界を一つにつながったものとしてとらえたとき、「宇宙」と呼びます。
 だから、「宇宙論」=「コスモロジー(cosmology)」では、一つの秩序ある世界として人間や自然のあり方がどうあるべきか、論じられます。

ⅱ)スペース

 日常で使う「宇宙」は、正確には「宇宙空間(space)」のことです。
 
 今後、宇宙への進出、開発は盛んになっていくことでしょう。
 国際宇宙ステーション(ISS)など、宇宙における国際協力はなんと1988年から始まっています。
 民間の宇宙ビジネスや宇宙旅行も実現しています。
 日本を含めいくつかの国では、宇宙軍も創設されています。

 しかし、、、
 人類が進出するところ、環境問題は無縁ではありません。
 スペースデブリ、宇宙ゴミの問題です。
 現在、地球周辺の宇宙空間には、破壊された人工衛星のかけらなど、無数のデブリが浮遊しています。
 それが宇宙船を壊し、乗員の命を脅かします。

 環境問題が地球上だけの問題ではないところに、人間の業(ごう)を感じるのは私だけでしょうか。

世界観

 「世界観」とは〈人間が世界をどう見るか〉ということです。
 だから、人間と自然との関係に大きく左右されます。
 社会や時代によっても変わります。
 世界観は、多くの場合、神や宗教という形でとらえられてきました。

ⅰ)デカルト二元論とコスモロジー

 現代を語る上で押さえておきたい世界観が「デカルト二元論」と「コスモロジー」です。

 デカルト二元論は、寒冷で厳しい自然を克服した近代ヨーロッパの世界観で、その根底には、人間と自然との対立があります。
 一方、コスモロジーは、世界を一つのつながったものとしてとらえます。
 簡単にいえば、デカルト二元論は人間と自然との関係を《切り離し》でとらえ、コスモロジーは《つながり》でとらえます。

ⅱ)切り離し

 私たちの生活は《切り離し》で成り立っています。
 自然のもつ不快さや不便さを嫌って、自然から切り離される ●●●●● ことで快適さや便利さを手に入れています。

 たとえば、部屋を閉め切って、エアコンを使います。
 虫が近寄らないように、殺虫剤を撒きます。
 車で走るために、アスファルトで道路を覆います。

 デカルト二元論は、近代の世界観として、私たちの生活を支えているのです。

 が、良いことばかりではありません。
 人間と自然の関係が切り離される ●●●●● ことで自然環境問題が起こり、人間同士の関係が切り離される ●●●●● ことでアイデンティティの危機が起こっています。

ⅲ)つながり

 では、どうすればよいでしょうか。
 根本的には、切り離された ●●●●● 関係性を見直すことでしょう。

 コスモロジーは、関係をつなぐ ●●● キーワードとして登場します。
 「宇宙論的世界観」などと漢字でいわれると、難しく聞こえますが、、、
 世界を宇宙として論ずること、世界を一つのつながった ●●●●● ものとしてとらえる世界観です。

 ただ気をつけてほしいのは、私たちの豊かさが《切り離し》で成り立っている以上、それを安易に捨てることはできない、ということです。

 「つなげろ」と口で言うのは簡単ですが、現実的でない場合が多い。

 たとえば、自然を大切にするとは、虫たちとも仲良くするということです。
 小さな虫が部屋に紛れ込んだだけで大騒ぎする現代人が本当に自然との共生などできるでしょうか。

 私たちがめざさなければならないのは、かつてのような《つながり》を取り戻すことではなく、現代の豊かさを前提とした、新たな《つながり》の模索です。


1-2-2「宗教」について


新入試評論文読解のキーワード300 増補改訂版
大前 誠司 編著
1,430円・四六判・328ページ 

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著者略歴

  1. 大前 誠司

    1962年徳島県生まれ。東京大学法学部卒。
    一般社団法人学びプロジェクト(manabi-project.com)代表理事。
    現在、あざみ野塾/あざみ野予備校、あざみ野大人塾などを運営。

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