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今日の漢文

孔子曰く、之を導くに政を以てし、之を斉うるに刑を以てすれば、民免れて恥無し。…

本文(書き下し文):
孔子曰く、之を導くに政を以てし、之を斉うるに刑を以てすれば、民免れて恥無し。之を導くに德を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥有りて且つ格る、と。老子称す、上德は德とせず、是を以て德有り。下德は德を失わず、是を以て德無し。法令滋滋章らかにして、盗賊多く有り、と。太史公曰く、信なるかな是の言や。法令は治の具にして、治の清濁を制するの源に非ず。

読み:
こうしいわく、これをみちびくにまつりごとをもってし、これをととのうるにけいをもってすればたみまぬかれてはじなし。これをみちびくにとくをもってし、これをととのうるにれいをもってすれば、はじありてかついたる、と。ろうししょうす、じょうとくはとくとせず、ここをもってとくあり。かとくはとくをうしなわず、ここをもってとくなし。ほうれいますますあきらかにして、とうぞくおおくあり、と。たいしこういわく、まことなるかなこのげんや。ほうれいはちのぐにして、ちのせいだくをせいするのみなもとにあらず。

通釈:
孔子は言っている、「法令によって民を導き、刑罰によって民を統制しようとすると、民は法令や刑罰の裏をくぐることだけを考えて悪を恥じる心を持たなくなる。道徳によって民を導き、礼儀によって民を統制すれば、民には悪を恥じる心が育ち、正しい道をふみ行うようになる」と。老子も言っている、「高い德を具えた人は、自分を有徳者だとは意識しない。だから德が身についているのである。つまらない德しか具えていない人は、自分の德を誇示しようとする。だから德が身につかないのである」と。また、「法律や禁令が整備されればされるほど、盗賊はふえるものだ」と。太史公は言う、「これらの言葉はまことにその通りだ。法令というものは世を治める道具であって、政治の好し悪しを決定する根源ではない。

出典:
新釈漢文大系 115 史記 十三(列伝 六)』2ページ

新釈漢文大系 115 史記 十三(列伝六)

 

ポイント
「酷吏列伝」の冒頭の一節。酷吏とは法の適用や刑の執行が苛酷な役人のこと。十一人の酷吏の伝が記されている。孔子の言葉は『論語』為政篇に、老子の言葉は『老子』28章・57章に見える。司馬遷はこの少し後の箇所で「国政にとって肝要なのは道徳であって、苛酷な法令ではない」と述べている。

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