『学びを深めるヒントシリーズ 平家物語』
吉永昌弘 編著(A5判、272頁、2,200+税) 好評発売中!
新学習指導要領対応!
「深い学び」を実現する、教場の『平家物語』虎の巻。
次期学習指導要領のキーワード「主体的・対話的で深い学び」。高校国語の現場で、これをどのように実現していけばよいのか。『平家物語』の国語総合・古典A・古典Bの教科書採録章段を対象に、最新の研究成果を踏まえて、高校生が現代の感覚に引き付けて読むための、鑑賞のヒントと探究のポイントを紹介!
⇒諸本の読み比べを通して、『平家物語』の魅力を多角的に探究!
⇒登場人物をクローズアップ!『平家物語』に描かれる人間ドラマに迫る!
⇒地図や場面図を多数採録!
◆各章段の構成◉原文/現代語訳/語注 |
目次
この本を手にとってくださった皆様へ
『平家物語』について
凡例(この本の使い方)
・盛者必衰の理(祇園精舎・巻第一)
・白拍子は皆「野辺の草」 (王・巻第一)
・私を舟に乗せてくれ(足摺・巻第三)
・水鳥が見せた源氏の大軍(富士川・巻第五)
・一首の歌に、生きた証をのこしたい(忠度都落・巻第七)
・誰が一番乗り?(宇治川先陣・巻第九)
・共に最後のいくさをしよう(木曽最期・巻第九)
・落ち行く前に戦果を捧ぐ──女武者巴の奮戦(木曽最期・巻第九)
・すべては主君の名誉のため(木曽最期・巻第九)
・義経を手本にせよ(坂落・巻第九)
・武芸の家に生まれなければ(敦盛最期・巻第九)
・命は惜しいものであった(知章最期・巻第九)
・波の下にも都はございます(先帝身投・巻第十一)
・冥土の旅の供をせよ──勇将、知将の死(能登殿最期・巻第十一)
・宮中の月も今は夢──建礼門院の思い(大原御幸・灌頂巻)
コラム
①『平家物語』の諸本
②殿下乗合事件
③清盛の「悪行」と死
④斎藤実盛
⑤屋島の戦いと義経
⑥「敦盛最期」の後代への影響
⑦後白河院
⑧『平家物語』の終わり方──特色ある終結部を持つ覚一本と延慶本
粗筋と年表
①「祇園精舎」から「祇王」まで
②「祇王」から「足摺」まで
③「足摺」から「富士川」まで
④「富士川」から「忠度都落」まで
⑤「忠度都落」から「宇治川先陣」まで
⑥「木曽最期」から「敦盛最期」まで
⑦「敦盛最期」から「先帝身投」まで
⑧「能登殿最期」以後
付録
参考文献
平氏略系図
源氏略系図
天皇家・平氏・摂関家関係系図
平安時代の軍装
「この本を手にとってくださった皆様へ」より一部抜粋
私が『平家物語』に出会ったのは、中学一年生のときだった。たしか教科書に「那須与一」が載っていて、「与一鏑(かぶら)をとッてつがひ、よッぴいてひやうどはなつ。小兵(こひやう)といふぢやう十二束三伏(そくみつぶせ)、弓は強し、浦ひびく程長鳴(ながな)りして、あやまたず扇のかなめぎは一寸ばかりおいて、ひィふつとぞ射きッたる。鏑は海へ入りければ、扇は空へぞあがりける。しばしは虚空にひらめきけるが、春風に一もみ二もみもまれて、海へさッとぞ散ッたりける」にしびれた。耳に心地よいリズム、見事な対句表現、躍動感あふれる擬音・擬態語。ひらめく扇は折しも吹き抜けた春風にもまれ、海へと落ちる……。格好いい、と思った。担当の先生から課題図書として与えられた長野嘗一(ながのじょういち)氏の『平家物語―若い人への古典案内―』を読みふけり、もともと歴史好きだったことも相まって、高校生のときには講談社学術文庫の『平家物語全訳注』(杉本圭三郎/すぎもとけいさぶろう)で原文を通読した。結果として大学の国文学科に進学し、『平家物語』で卒業論文を書いて、卒業後は国語の教員として働いているのだから、『平家物語』との出会いは私の人生を決めたと言っても過言ではない。
~(中略)~
我々の生きる社会は今、大きな変化の中にある。「かくあるべき」という理想の生き方が失われた一方、価値観や考え方が多様化し、様々な生き方が認められつつある。『平家物語』の描いた時代もまた歴史の転換期であった。人々は滅びゆくものを愛惜しつつ、新しい時代を作り出したのである。『平家物語』を読み解き、先の見えない中、人々が何を考え、どう生き、そして死んでいったのか、ということに考えを巡らせることで、自分なりの人生観や生き方を獲得することができるのではないか。
(続きは本書でご覧ください。)