「ことば」の教師のコミュニケーション能力【『日本語学』2020年夏号】
特集◆「ことば」の教師のコミュニケーション能力
近年、日本語教育の世界では、日本語教師に求められる資質・能力の見直しがはかられ、養成・研修プログラムの充実が進んでいる。たとえば、2019年に文化審議会国語分科会によって発表された「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告) 改定版」では、日本語教育人材に共通して求められる基本的な資質・能力の一つとして「(3)コミュニケーションを通じてコミュニケーションを学ぶという日本語教育の特性を理解していること」が挙げられている。しかし、本報告書が示す日本語教師養成課程における具体的な教育内容には、「コミュニケーション」に注目した事柄として、コミュニケーション能力に関する知識を身に付けることと、日本語教育を実践する上で必要となるコミュニケーション能力を向上させることが掲げられているものの、後者、つまり、教師自身が授業を実践する上で必要なコミュニケーション能力が具体的にどういったものなのかは明確に示されておらず、異文化コミュニケーション能力の範囲にとどまっているように見受けられる。
日本語、英語、国語はいずれも「コミュニケーション能力」を学習者に身に付けさせることが目的の一つであり、学習内容となる。同時に、教師がいかに学習者とコミュニケーションをするのか、学習者とのやりとりを通じて、いかにコミュニケーションに対する意識を高めていくのか、ということも、学習者のコミュニケーション能力の育成に大きな影響を与える。本特集では、ことばを扱う教師に必要なコミュニケーション能力について考える。
目次
◯「ことば」の教師に必要なコミュニケーション能力とは何か(横溝紳一郎)
◯「日本語」授業における教師のコミュニケーションの課題(文野峯子)
◯「国語」授業における教師のコミュニケーションの課題(森篤嗣)