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著者解説『新入試評論文読解のキーワード300』

【評論文読解のキーワード】中世(ヨーロッパ)

1-1-2 中世(ヨーロッパ)

 現代文に中世はほとんど出てきませんが、近代への流れを説明するためにも、簡単に中世に触れておきます。

《貧しさ》の時代=神の時代

中世ヨーロッパ 古代では、地中海沿岸の地域がヨーロッパでした。
 では、なぜ、現在のような、ヨーロッパ大陸=ヨーロッパ、になるのでしょう?
 それは、都市国家であったローマがどんどん拡大していき、ローマ帝国として君臨するようになったからです。
 細かい歴史はさておき、その結果、ヨーロッパ世界は現在のような地域になりました。

 ヨーロッパというと、豊かで進んでいる地域だというイメージがありますよね?
 でも、それは近代以降の話です。
ロンドンパリの緯度 この図を見ると、ロンドンやパリが、北海道より北にあるのがわかります。
 しかも、一面に森林で覆われ、土地も痩せていましたから、農業も簡単ではありませんでした。
 それが中世ヨーロッパです。
 5世紀から1000年間も続きます。

 その《貧しさ》のなかで生きていくために必要だったのが、キリスト教でした。
 いやいや、苦しい時の神頼み、ではありません。
 貧しいからこそ、人々は神の教えにしたがって勤勉に働き、教会は生活に苦しむ人たちを助けました。
 かっこよくいうと、キリスト教は、《貧しさ》のなかで生きていくためのセーフティネットだったわけです。                          
 かつて中世は、神に支配された「暗黒時代」だと考えられていました。
 が、実際は、貧しいながらも真伨(しんし)であった、中世の人々の暮らしこそが、近代の〈豊かさ〉を生み出したのだと考えられています。
             
 ちなみに、、、
 中世ヨーロッパ人は、1000年間かけて、ヨーロッパ大陸を覆っていた森林を開拓し、農地に変えていきました。
 それが、実は、歴史上、最初の大規模な自然破壊だといわれています。

イスラム教の時代

 日本で暮らしているかぎり、なかなか理解できないのがイスラム教とのかかわりです。
 というより、なんか怖い!っていうイメージの方が先行しそうです。
 
 が、7世紀に誕生したイスラム教は、その後、世界中に広がり、ヨーロッパを圧迫していきます。

 イスラム教との関係が、ヨーロッパの歴史を大きく動かしてきたのです。
 たとえば、十字軍の失敗は、結果的に大航海時代を生み出し、ヨーロッパが世界に進出するきっかけになります。

中世イスラム 本当に大ざっぱな図ですが、これは15世紀にイスラム勢力がヨーロッパを侵食している様子を表したものです。
 イベリア半島が15世紀末までイスラム教国だったこと、知っていましたか?
 東ヨーロッパは15世紀にオスマントルコが勢力を伸ばしてきます。

 中世は、イスラム教がキリスト教を圧倒していた時代です。
 それを逆転したのが、近代という時代です。
 現代を深く知るためには、中世以来のキリスト教とイスラム教の関係を学ぶ必要があることがわかります。

動画を見る


1-1-3近代(ヨーロッパ)


新入試評論文読解のキーワード300 増補改訂版
大前 誠司 編著
1,430円・四六判・328ページ

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著者略歴

  1. 大前 誠司

    1962年徳島県生まれ。東京大学法学部卒。
    一般社団法人学びプロジェクト(manabi-project.com)代表理事。
    現在、あざみ野塾/あざみ野予備校、あざみ野大人塾などを運営。

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