【著者インタビュー】「憲法への招待」著者:渋谷秀樹先生(4/全5回)
昨年配信して大好評だった、「憲法への招待」※の著者・渋谷秀樹先生のロングインタビューを全5回の連載にまとめました。
※『精選 論理国語』(明治書院)の採録教材
第1回「高校の先生や高校生に伝えたいこと」
第2回「法学における《解釈》の限界と可能性」
第3回「国語科に期待されること」
第4回「法律の現在とこれから」
第5回「法学部進学指導について」
第4回「法律の現在とこれから」
ーー法律の専門家として法律の現在とこれからについて教えていただけますでしょうか。
各種の法律にはそれぞれに歴史があります。ある罪を犯したら罰せられるとか、契約というものはこういうものだとか、家族のあり方とはこういうものだとか。それは人類の歴史といってもいい。それぞれが古来より経験によってできあがってきたある種の集積物ですから、それが今の時代に合っているのか常に見直すことが必要です。そのためには今どうなっているのかをまず知る。知った上で変えた方がいいものがあれば変えていくという手順が大事だと思います。
これからの世の中はどうなっていくかの予想はなかなか難しい。新型コロナウイルス、こんなものはほとんどの人が想像すらできなかった。そいうものが現れてきたとき、法律でどう対応するかについても、今の政府の対応は右往左往しながらの対応で、本当にその対応方法でいいのかについても様々な意見があります。
大事なのは法律を変える前に、今の法律で対応できるかできないかをちゃんと見極めることです。法律を変えるとなると、長いスパンで世の中を変えることになるから影響力は大きい。それを深く考えたうえで変えるべきものは変えるとしないと、それが間違っていたとしたら取り返しのつかないことになる。やはり慎重になすべきでしょう。
法律は抽象的に書いてあるので、それを使う立場にある人、行政、正確に言うと内閣以下の行政各部が、現にある法律の中で何ができるかをまず考えることが大事です。考えた上で今の法律の中ではどうしてもできないというときに、初めて法律改正という方法が出てくるのです。