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【教材解説】『精選 現代の国語』指導資料

単元4「未来を予測する最善の方法」解説

【解説】 松田雄馬著「未来を予測する最善の方法」

 筆者は著書『人工知能はなぜ椅子に座れないのか』で、「意味」という語句にも触れている。人工知能が人間のような「知能」を得ることができるかどうかを論じるうえで、「意味」が重要なキーワードになるとしている。

 私たち人間にとっての「意味」は、「行為の意味」であり、「行為」を行うには「身体」が不可欠である。機械が「意味」を理解するためには、「身体」の獲得が不可避であり、強い人工知能、つまり自ら判断することのできる人工知能の実現が目途すら立たない所以である。

 生き物は、いつ餌にありつけるともわからないなかで、ときには他の生き物と共存しながら、またときには対立しながら、即興劇的に、自らの行動を変化させ、実世界を生き抜いていく(「生命知」)。それによって、それまで「記号」にすぎなかった自分と他人に「意味」が与えられ、「即興劇」が続いていく。

 この考え方は、あらゆる分野に通ずる。その例として、筆者は河田聡大阪大学名誉教授の言葉をあげる。

「ほかの人が書いた論文を読むときに、その著者の動機やこころを知る努力を日常的に続けると、著者の発想力に近づけるかもしれません。論文に書かれている結果だけを勉強しても、アイディア創造力は鍛えられません」

 結果という「記号」だけを追うと、創造性につながる「意味」は読み取れないとし、先行研究との「対話」を「即興劇」と表現して、その重要性を唱える。

 これらの考え方は、次の教材「ビッグデータと人工知能」にも通ずるものであり、おそらく今後数年間は、大学入試等で取り上げられる情報論の観点として普遍的なものと考えられるので、しっかり基本語彙等はおさえておきたい。

 また筆者は、「未来を予測する方法」を提示する一方で、「私たちの社会が誤った方向に導かれる可能性」として、著書『人工知能の哲学』で「フィルターバブル問題」を取り上げている。現在、多くのインターネットサービスが、ユーザーの属性や行動履歴といったデータを活用して、ユーザー一人一人に「好ましい」と思われる情報を選別(「パーソナライゼーション」)して提示している。これにより、インターネットを介して集める情報が、個人の属性や行動履歴に支配され、自分にとって不都合な(と人工知能が判断する)情報が入ってこなくなる問題である。なぜ問題なのかといえば、人工知能が集めてくる情報を人間が消費するだけになってしまい、創造力が著しく損なわれていくと考えられるからだ。

 あらゆる情報が予測され統制されれば、いわば「完全世界」となる。そこでは人類は何もする必要がなく、聞くよりも早く回答が用意される。そこでは人間は、ただ生き、老いて、滅びていくだけである。

 人工知能をそのような「パーソナライゼーション」として使えば、そうした末路を迎えることを念頭に置いておかなければならない。真に恐れるべきなのは、人工知能の出現そのものではなく、誤った使い方をすることなのだ。

 

 教材おすすめポイント

「人工知能」が人間の知能を超える「シンギュラリティ」に触れ、情報化社会の中でどう生きるべきかを問う、数理科学者による示唆的な文章。構造的な読み方を身につけます。

第3回は、単元6「人と動物、共存の場所」解説

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