創造性を培い、批評する力を育てる「文学国語」(幸田国広)
雑誌『日本語学』2023年3月春号より特集記事の一部を紹介します!
–第3回–
創造性を培い、批評する力を育てる
「文学国語」
幸田国広(早稲田大学教授)
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1 「文学国語」で育成を目指す資質・能力
[1]資質・能力を育成する学習指導の条件
「教材を教える」発想の転換から
資質・能力を育成する学習指導の端的なイメージは、例えば、幼い子どもが自転車に乗れるようになる過程に重ねることができる。乗り方についての知識とその理解だけではどうにもならない。何よりも子ども自らが自転車に乗ってみることが不可欠となる。当然、はじめはうまく乗れない。転んだり、ぶつかったりする。その様子を親は見取り、「まっすぐ前を見てハンドルをグラグラさせないように」とか、「3回だけペダルをこいでみよう」とか、まずできそうなことを指示し、順序立てて教えていくことで次第に子どももコツをつかんでいく。
「言語の教育」である国語科の学習指導も、教材内容だけでなく、「わかりやすいスピーチができる」「説得力のある意見文が書ける」「現代小説の表現の工夫について評価する」「古典に描かれた季節観について批評する」といったことが教科の資質・能力として期待されている。
このような学習が求められるのは、何も今始まったことではないが、高校国語では長年の間、期待される「言語の教育」としての役割に課題を抱えていることが指摘されてきた。今回の改訂に際しても、次のような指摘がなされた。
教材の読み取りが指導の中心になることが多く、国語による主体的な表現等が重視された授業が十分行われていないこと、話合いや論述などの「話すこと・聞くこと」、「書くこと」の領域の学習が十分に行われていないこと(注1)
(続きは、「日本語学 2023年 3月号 春号」をご購入ください。)