アカデミックスキルズの基礎—高大接続の観点から—(第1回「自己紹介」)
2023年3月31日に開催した、「明治書院オンライン研修会」の内容を、全7回の連載にまとめました。
第1回「自己紹介」
第2回「問題意識をもった切っ掛け」
第3回「書くことのベースライン(アカデミックスキルズ)」
第4回「書き方をどのように教えるか—1つの案—」
第5回「対話の必要性」
第6回「まとめ(対話から創造へ)」
第7回「質疑応答」
第1回 自己紹介
早稲田大学の林直亨(はやし なおゆき)と申します。(研究者詳細 - 林 直亨 (waseda.jp))よろしくお願いします。
大勢の前でお話をする機会はたくさんあるんですが、高校の先生を対象に、専門でないテーマでお話しするのは、実は今日が初めてでして多少緊張しております。内容についても、先生方の方がお詳しいところがあったり、高校国語とは違う立場じゃないの?ということもあるかもしれませんが、その点についてはご了解いただければと思います。
本日の話題は、「自己紹介」「問題意識をもった切っ掛け~大学生の読み書きの実態~」「書くことのベースライン」「書き方をどのように教えるか—1つの案—」「対話の必要性」ということでお話をしていきます。
まず、今日の内容について、実は三樹さんが書いてくださったのがわかりやすくて(※編集者注:明治書院・三樹蘭ブログ(明治書院研修会2023のご案内 - 明治書院 (meijishoin.co.jp)))、この「良い論文を書くのに重要なことは誰かに読んでもらい有用な意見をもらうこと」だということです。ただ、指導教員に添削する時間はありません。これは多分、高校の先生も同様じゃないかと思います。そこで必要になってくるのが学生同士の「ピアレビュー」です。それで、このピアレビューするところまでもってくるには、ある程度のライティングのスキルと、対話のスキルが必要だということで、本日は「ライティングのスキル」「ピアレビュー」「対話」、この三つを主軸にお話をしていけたらなというふうに思っているところです。
まず最初に自己紹介をします。これをしないと、なぜ私がこういう話をしているか、皆さん理解できないと思いますので、僭越ながら私の紹介をさせていただきたいと思います。私は早稲田大学のスポーツ科学の出身です。2013年から東京工業大学のほうにおりまして、16年から21年にリベラルアーツ研究教育院というところで教育改革を進める立場におりました。東工大では、教養卒論という課題が学部3年生に必修で課されているのですが、これのワーキンググループを立ち上げていました。また同時に、大学院生向けのリーダーシップ道場というものを立ち上げていました。それで、ピアレビュー実践として、この大学院生がこの教養卒論のお手伝いをするような、そういった対話をメインにした活動の立ち上げをしました。こうした経緯があり、リベラルアーツの立ち上げに際しても随分と勉強する機会がありましたので、『学び合い、発信する技術―アカデミックスキルの基礎』(岩波ジュニア新書)という著書を昨年上梓させて頂いたということになります。ちなみにこの書籍は「アカデミックスキルの基礎」と書いてありますが、タイトルを「アカデミックスキルズ」にするとちょっと語呂が悪いので避けましたが、正しくは「アカデミックスキルズ」です。
現在は早稲田大学のスポーツ科学学術院に所属しています。こちらは、いわゆるエリート選手が一割程度いることが特色かと思います。彼らはいろいろな能力を評価されて入学してくるわけです。競技力が非常に高い人や、国際経験が非常に豊かな学生さんもいます。
第2回「問題意識をもった切っ掛け」