アカデミックスキルズの基礎—高大接続の観点から—(第6回「まとめ(対話から創造へ)」)
2023年3月31日に開催した、「明治書院オンライン研修会」の内容を、全7回の連載にまとめました。
第1回「自己紹介」
第2回「問題意識をもった切っ掛け」
第3回「書くことのベースライン(アカデミックスキルズ)」
第4回「書き方をどのように教えるか—1つの案—」
第5回「対話の必要性」
第6回「まとめ(対話から創造へ)」
第7回「質疑応答」
第6回 まとめ(対話から創造へ)
最後にまとめです。まず、「考えることから書くこと」、これは理解できると思うんですけれども、「書くことから考えること」を引き出せるというのが、ライティング・対話・ピアレビューの重要なポイントかと思っています。
もう皆さんご存知のように、AI、人工知能も「書く」ことができます。ただし、この書いたものを読んで「考える」ことはできないんですね。さらに、この「考えから新しいことを生み出す」ということもできないわけです。今まで人類がネット上で積み上げてきたデジタル情報をまとめるだけなんです。なので、私達人類が新しい情報を考えていかないと、人間社会は良くなっていけないということになる。全員がAIだけを使うようになると、新しい情報が生まれなくなります。AIをあまり過信してもいけないということですね。AIは今どれくらいまとめることができるかというと、昨日Chat GPTに「パラグラフライティングとは?」と聞いてみました。 こういう答えが返ってきました。実はこれ、ライディングスタイルにしたがって書いてるんですね。Chat GPTもパラグラフライティングを守って書いている。もしどうしてもライティングできないよ、という生徒さんがいたら、まずAIに書かせて、そこからスタートするような指導の仕方も、もしかしたら有効かもしれません。これを使うなという指導は、もうほぼ不可能だと思いますので、これで書いたことを元に、レビューして「あ、そうか。こういうふうに書きだしたらいいんだ」っていうことに気が付いてもらう。もちろんそれだけでは伸びませんので、ここから何を書いていくかということはもちろん変えていかないといけません。 ただ、「Future of Life Institute」が出した声明では、しばらくAIの実験をやめたほうがいいということを言っていますね。今はそういうレベルまで達しておりますので、これをどういうふうに私たちが使っていくかということは、今後も考えていかないといけませんし、国語教育はここが重要なポイントなんじゃないかなと思っております。
最後になりますけれども、「対話から創造へ」ということを、私はとても大切にして行きたいと思っています。塚田稔先生という方が「芸術脳の世界」でこのように書いています。
「個は互いのコミュニケーションによって情報を交換し、自分にない異質の情報を吸収することによって、新たな自分を発見する。ここに創造の世界が誕生し、客観的に眺めることができる自分が形成される。…こうして我々は、既に展開してきた世界を捨て、新しい仮説のもとに新たな世界を展開することになる。」
これは、まさに「対話から創造へ」ですね。コミュニケーションすることから創造に向かっていくんだということだと思います。対話、あるいはそこからピアレビューをしてライティングを直していくという。非常に単純な活動のように思いますけれども、私達が新しい世界を切り開いていくためには、こういった活動が必要なのではないかなというふうに思っているところです。どうもありがとうございました。
第7回「質疑応答」