授業づくりのヒント『大鏡』での実践を例に(2/全4回)
1時間目
最初に5人グループを作ることを指示し、グループごとに、自由なやり方で『花山天皇の退位』『肝試し』の両方を音読させる。ここで教科書や辞書を使って『大鏡』についての基本的な知識も確認させておく。次に、以下の5項目を、一人1つずつ担当し、グループで読解を完結させる授業である旨を伝えた。
A 『花山天皇の退位』の内容を説明する。
B 『肝試し』の内容を説明する。
C 文中の助動詞「き」「けり」について解説する。
D 文中の助動詞「つ」「ぬ」について解説する。
E 文中の係り結びについて解説する。
2・3時間目
A〜Eの担当項目ごとに分かれ、話し合いを行う。かなりのレベルの読解を要求するものであるため、こちらから積極的に話し合いに参加して、早い段階から適宜、以下のような示唆を与えることを心がけた。
Aグループ
教科書の脚注を示しながら、花山天皇の出家が、最愛の、しかも懐妊中の弘徽殿女御の死によって生まれた道心に由来するものだということを確認する。略系図を見て、花山天皇と道兼の関係を確認し、更に花山天皇の後に即位するのが一条天皇であることも意識しながら、この陰謀の性質を考えさせる。5人グループに戻った際に、自分なりの「道兼像」「花山天皇像」を発表できるように準備しておくことも指示した。
Bグループ
「『肝試し』関係見取り図」をよく見るよう指示する。最初に、自分が花山天皇から肝試しを命じられたことをイメージし、次に、肝試しを命じる花山天皇の立場になって考えることも指示した。5人グループに戻った際に、自分なりの「道兼像」「花山天皇像」を発表できるように準備しておくことも指示した。
Cグループ
Aグループと同様に、花山天皇の道心が、弘徽殿女御の死に由来するものであることを確認する。「き」と「けり」を課題としたため、その区別ばかりを話し合っているように感じられたので、「けり」の中でも、気付き・詠嘆が際立つ「けり」についての読解を促した。
Dグループ
ここでも、花山天皇の道心が、弘徽殿女御の死に由来するものであることを確認する。どのクラスでも、完了と強意を区別して「何を強調しようとしているのか」の話し合いをしていたが、意志的な動作に付く「つ」と、自然推移的な語に付く「ぬ」の違いを文法書で調べさせ、その区別についても考えるように指示した。
Eグループ
それぞれの係り結びの用例について考え、更に、例外である「結びの省略」「結びの流れ」「係助詞の文末用法」の総てが出てくることについても、ほぼまとめられているようであったので、次なる課題として、『花山天皇の退位』の結末部分に登場する「東三条殿」について考えさせた。その際、全く手がかりのない疑問であることを表す「か」に対し、「や」が、ある程度の見込みを持ちながらの疑問を表している(「さることやし給ふ((道兼が)もしやそのようなこと(出家)をなさるのでは)」「おして人などやなし奉る(もしや無理に人などが(道兼を)出家させ申し上げるかもしれない)」)、という区別についても触れた。(続く)
(略系図・見取り図は、明治書院『新 精選 古典B 古文編』・同指導書より掲載。)
※この連載は、『国語の窓3号』に掲載しています。