共通必履修科目としての「現代の国語」と「言語文化」──バランスを重視した国語科の資質・能力の育成──(大滝一登)
雑誌『日本語学』2022年3月春号より特集記事の一部を紹介します!
共通必履修科目としての「現代の国語」と「言語文化」
──バランスを重視した国語科の資質・能力の育成──
大滝一登(文部科学省初等中等教育局視学官)
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1 新学習指導要領の実施を目前にして
令和4年4月から、いよいよ高等学校においても、新学習指導要領が年次進行で実施される。今回の改訂は「文学軽視批判」など社会的に大きな話題となったこともあり、これまでにも増して多くの方々の関心を集めていると考えられる。正直なところ、改訂を担当した筆者も、実際に高校国語の授業がどのように変わるのか大変興味深く感じている者の一人である。
しかし、「「現代の国語」は「現代文」、「言語文化」は「古典」のことではないのか」という声や、「「現代の国語」に文学教材が入るかどうかがなぜ問題になるのか」という声など、科目の内容が十分理解されないまま、SNSでコメントがやり取りされるといった、まさに懸念すべき事態も起きているようである。言葉に関するこうした事態こそ国語科が対象とすべきものであり、特に教壇に立って指導する教師には、学習指導要領に対する正確な理解とその具現化が求められることは言うまでもない。
そこで本稿では、まず全国の高等学校での履修が始まる共通必履修科目である「現代の国語」と「言語文化」に焦点を当て、改訂の趣旨や内容を確認するとともに、望まれる指導の在り方について言及することとしたい。
2 学習指導要領改訂が目指すもの
改訂の内容について述べる前に、まず確認しておきたいことは、学習指導要領がなぜ改訂される必要があるのかという点である。
『高等学校学習指導要領(平成30 年告示)解説国語編』(以下「解説」という。)第1章第1節の1「改訂の経緯」の冒頭は、「今の子供たちやこれから誕生する子供たちが、成人して社会で活躍する頃には、我が国は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。」の一文で始まり、生産年齢人口の減少、グ…
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