マインドセットと4チャンネルモデル(藤森裕治)
雑誌『日本語学』2022年3月春号より特集記事の一部を紹介します!
マインドセットと4 チャンネルモデル
──「主体的・対話的で深い学び」の基礎理論──
藤森裕治(文教大学教授)
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はじめに
「主体的・対話的で深い学び」を目指した授業づくりの基礎理論として、本稿では以下の点について考察する。第1 は、この学びを進めるにあたって、学習者に育てるべきマインドセット(Mindset:定義は後述)とは何かという問題である。第2 は、この学びを展開する際に、学習者・教師・素材の三者関係はどのようにとらえる必要があるかという問題である。そして第3 は、上の2 つの問いに対する答えを踏まえるなら、学びの枠組みはどのような構成要素と展開過程とが構想されるかという問題である。
なお、筆者は本誌37-6 号で「主体的・対話的で深い学び」がなぜ求められたのかについて述べている(藤森, 2018)。併せて参照されたい。
1 マインドセット
[1]マインドセットとは何か
マインドセット(Mindset)とは、その人の資質や経験、教育、育った時代背景などによって形成されるものの見方や考え方を指す。そこには個人の信念や価値観、行動傾向なども含まれ、我々は無意識に自らのマインドセットを適用しながら、日々の生活を営んでいる。
心理学者・教育学者の立場からマインドセットに注目し、これを詳しく探究したのは、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック(Carol S. Dweck)、ジョー・ボアラー(Jo Boaler)らである。ドゥエックらの研究によると、人間のマインドセットにはFixed Mindset とGrowth Mindset という対照的な2 つのタイプがあり、そのどちらの傾向が強いかによって、学び方、ひいては生き方に重大な違いが生まれるという。彼女らの研究をもとに、これら2つのタイプの特性を列挙すると、次のようになる。
(続きは、「雑誌『日本語学』 2022年春号」をご購入ください。)