学習意欲を喚起する「言語文化」の授業──時空を超えて「想い」に出会う──(沖奈保子)
雑誌『日本語学』2022年3月春号より特集記事の一部を紹介します!
学習意欲を喚起する「言語文化」の授業
──時空を超えて「想い」に出会う──
沖奈保子(ドルトン東京学園中等部・高等部教諭)
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1 言語文化に出会う─「あなたの家にある最も古い文書を探してきてください」
高校の国語教員として常に向き合うのが「古典嫌い」というワードだ。平成25 年中学生全国学力・学習状況調査結果からも、古典を好意的に捉えている生徒は全体の約29.3%で、約70%の生徒は古典に対してマイナスの感情を持っている。(注1)
これまで幾度となく、「古典嫌い」と向き合ってきた。「古典が苦手」という遠慮がちな発言から、「古典が嫌い」、「なんで古典を学ばなきゃいけないのかわからない」、しまいには、「古典って必要なんですか?」というストレートな問いかけもある。その都度、実は背筋が伸びる思いがする。生徒たちは怠け心や短絡的な気持ちで発言しているのではない。これまでの古典にまつわる学びの中で培ってきた悩みなのである。そう生徒は困っているのだ。
高等学校の国語科の課題と科目の見直しについて中央教育審議会答申において「古典学習について、日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受して社会や自分との関わりの中でそれらを活かしていくという観点が弱く、学習意欲が高まらない」(注2)ことが指摘された。これを踏まえて、上代から近現代に受け継がれてきた言語文化への理解を深める科目として「言語文化」が設置され、そしていよいよ令和4 年度からスタートする。
身の回りの生活や現代社会とつながる存在として、古典を感じられないのではないか。もし今の生活と地続きのものとして古典の世界を感じられるなら、学習意欲は喚起されるのではないか。言葉は文化だ。言葉によってこれまで長い年月の間受け継がれてきた文化を継承し、新たな文化を創造してきた。
新学期初回の授業でこう問いかけてみよう。「あなたの家にある最も古い手書きの記録、あるいは書物は何ですか。次回の授業で持ってきてください。」
クラス全員の家から持ち寄った、最も古い言葉たちを次の時間に素材にして…
(続きは、「雑誌『日本語学』 2022年春号【電子版】」をご購入ください。)