勅す。古人に云えること有り。樹静かならんと欲すれども風止まず、…
本文(書き下し文):
勅す。古人に云えること有り。樹静かならんと欲すれども風止まず、子養わんと欲すれども親待たずと。向し顕揚褒贈の事無くんば、則ち何を以てか先臣の德を旌し、後嗣の心を慰めんや。
読み:
ちょくす。こじんにいえることあり。きしずかならんとほっすれどもかぜやまず、こやしなわんとほっすれどもおやまたずと。もしけんようほうぞうのことなくんば、すなわちなにをもってかせんしんのとくをあらわし、こうしのこころをなぐめんや。
通釈:
勅す。古人は次のように言っている。「樹が静まろうとしても風は吹きやまない、子が親を養おうとしても親は待ってはくれない」と。万一、その名を顕彰し、褒揚してその位を追贈することがなければ、どうして亡くなった臣下の德をたたえ、後を嗣ぐ者の心を慰めることができようか。
出典:
『新釈漢文大系 102 白氏文集 六』131ページ
長慶元年(821)~2年ころに出された穆宗の詔勅の冒頭。詔勅の内容は、臣下8人の父に官位を授けるというもの。このころ白居易は、中書省で知制誥として制誥(勅命を伝える文書)の起草に当たっていた。「樹静かならんと欲すれども風止まず、子養わんと欲すれども親待たず。」の文言は『韓詩外伝』『説苑』『孔子家語』にも見える。