得たり。甲は家に居り妻の之を殴笞するを被る。…
本文(書き下し文):
得たり。甲は家に居り妻の之を殴笞するを被る。鄰人其の法に違うを告うれば、県は徒三年を断ず。妻訴えて云う、夫の告うるに非ざれば、伏さずと。
礼は妻の柔なるを貴べば、則ち宜しく暴を禁ずべきも、罪は夫の告うるに非ざれば、未だ刑を麗うるべからず。
読み:
えたり。こうはいえにおり、つまのこれをおうちするをこうむる。りんじんそのほうにたがうをうったうれば、けんはとさんねんをだんず。つまうったえていう、おっとのうったうるにあらざれば、ふくさずと。
れいはつまのじゅうなるをたっとべば、すなわちよろしくぼうをきんずべきも、つみはおっとのうったうるにあらざれば、いまだけいをくわうるべからず。
通釈:
(判題目の出題を得た。)甲は家にいて妻にむちで打たれた。隣人がその違法であることを訴え、県は徒三年の刑を下した。妻は、夫が訴えたわけではないと訴えて、承服しなかった。
礼では妻が柔和であることを貴ぶゆえに、乱暴は禁じられるべきであるが、その罪を夫が訴えたわけではないので、刑を加えることは許されない。
出典:
『新釈漢文大系 104 白氏文集 八』678ページ
判の一例。「判」は、判決文の意。唐代には、官吏の選考試験に判が課され、文章能力が試験された。白居易は、百条の判の模擬問題と模範解答を作成した。そのうちから、一つの判題目と解答の冒頭部分を掲げた。唐の法律では、妻が夫を殴打して負傷させても、夫が訴えなければ、妻は有罪とならない。