君子は人に先立つに悪を以てせず、人を疑うに不信を以てせず。…
本文(書き下し文):
君子は人に先立つに悪を以てせず、人を疑うに不信を以てせず。人の過ちを説かず、人の美を成す。往く者を存し来る者を存す。
読み:
くんしはひとにさきだつにあくをもってせず、ひとをうたがうにふしんをもってせず。ひとのあやまちをとかず、ひとのびをなす。ゆくものをそんしきたるものをそんす。
通釈:
君子は人に先んじて悪をもってするということはしない。ひとを疑うにしても邪推逆詐を用いることをしない。人の過ちについて説きあかすことをしない。人の美を成すことに心がけている。往く者の過ちはこれを恤れみ、来る者の善は明らかにし、その過ちを改むるや否やについて察する。
出典:
『新釈漢文大系 113 大戴礼記』188ページ
前漢の戴德が撰した『大戴礼記』、戴德の甥、戴聖が撰した『小戴礼記』、二つの「礼記」が基準的礼書としての評価を得、後漢に至って、「礼記」と言えば、『小戴礼記』を指すようになった。『大戴礼記』はもと85篇あったが、現在は40篇が残る。「曽子立事第四十九」の一節を掲げた。