江南春絶句(杜牧)
本文(書き下し文):
江南の春 絶句
千里 鶯啼いて 緑 紅に映ず
水村 山郭 酒旗の風
南朝 四百 八十寺
多少の楼台 煙雨の中
読み:
かうなんのはる ぜつく
せんり うぐひすないて みどり くれなゐにえいず
すいそん さんくわく しゅきのかぜ
なんてう しひゃく はっしんじ
たせうのろうだい えんうのうち
現代語訳:
江南の春を詠う絶句
千里の彼方まで、ウグイスが鳴き、葉の緑と花の紅が映え合う春景色が広がる。水辺の村にも、山の辺の村にも、新酒を告げる幟が風に揺れている。
南朝以来の四百八十にのぼる寺々、その数多くの伽藍が、春雨の中に煙っている。
出典:
『新釈漢文大系 詩人編9 杜牧』417ページ
この詩は目前の景を詠ったものではない。杜牧の脳裏にあった「江南の春」を描いたもの。前半の晴景と後半の雨景とを並べて、江南の美しい春景色を表現するとともに、後半には南朝の歴史に対する懐古の思いもこめられている。