君たるの道は、必ず須く先ず百姓を存すべし。…
本文(書き下し文):
君たるの道は、必ず須く先ず百姓を存すべし。若し百姓を損じて以て其の身に奉ぜば、猶お脛を割きて以て腹に啖わすがごとし。腹飽きて身斃る。若し天下を安んぜんとせば、必ず須く先ず其の身を正すべし。
読み:
きみたるのみちは、かならずすべからくまずひゃくせいをそんすべし。もしひゃくせいをそんじてそのみにほうぜば、なおはぎをさきてもってはらにくらわすがごとし。はらあきてみたうる。もしてんかをやすんぜんとせば、かならずすべからくまずそのみをただすべし。
通釈:
君主としての道は、必ずぜひとも人民たちをあわれみ、恩恵を施さなければならない。もし、(重税を取り立てるなどして)人民をむごく苦しめて、君主の身(の贅沢な生活)にあてるのは、ちょうど自分の足の肉を割いて自分の腹に食わすのと同じである。満腹したときには、その身が死んでしまう。もし、天下を安泰にしようとすれば、必ずぜひとも先ず君主の行いを正しくしなければならない。
出典:
『新釈漢文大系 95 貞観政要 上』29ページ
『貞観政要』は、唐の太宗の政治に関する言行を記したものである。掲載したのは、本文の冒頭にある太宗の言葉。帝王学の定番として人気のある本書であるが、江戸時代には、大名の教科書であった。現代の政治家や官僚・経営者も肝に銘じなければならない言葉ではないだろうか。