風林火山
本文(書き下し文):
兵は詐を以て立ち、利を以て動き、分合を以て変を為す者なり。故に其の疾きこと風の如く、其の徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如く、郷に掠めて衆に分ち、地を郭めて利を分ち、権を懸けて動く。
読み:
へいはさをもってたち、りをもってうごき、ぶんごうをもってへんをなすものなり。ゆえにそのはやきことかぜのごとく、そのゆるやかなることはやしのごとく、しんりゃくすることひのごとく、うごかざることやまのごとく、しりがたきこといんのごとく、うごくことらいしんのごとく、きょうにかすめてしゅうにわかち、ちをひろめてりをわかち、けんをかけてうごく。
通釈:
戦闘行為は、敵をあざむくことをもって根本方針とし、利を得んとして行動し、あるいは部隊を分散させ、あるいは集合させることによって、種々の変化をなすものである。このような訳で、進退の早いこと風のように過ぎ去り、ゆるやかに行進すること林のように森厳にして犯しがたく、敵地を侵し物資を掠奪すること火のように烈しく、時に動かないこと山のように泰然とし、わが戦術の知り難いことは暗闇のように何もわからず、行動を起こす時は雷の物をふるわすようにすばやく威圧し、村里を襲っては物資を兵に分配し、土地を奪ってはそれより生ずる利を兵に分け与え、すべてについてその軽重をはかり考えて適切に行動する。
出典:
『新釈漢文大系 36 孫子・呉子』174ページ
有名な武田信玄の旗印「風林火山」の出典である。いつの時代においても戦争はきれい事では済まされない。犠牲になるのは庶民である。