未だ君王の面を見るを得るを容されざるに、已に楊妃に遥かに目を側めらる。…
本文(書き下し文):
未だ君王の面を見るを得るを容されざるに、已に楊妃に遥かに目を側めらる。妬みて潜かに上陽宮に配せしめられ、一生 遂に空床に向て宿す。
読み:
いまだくんおうのおもてをみるをうるをゆるされざるに、すでにようひにはるかにめをそばめらる。ねたみてひそかにじょうようきゅうにはいせしめられ、いっしょう ついにくうしょうにおいてしゅくす。
通釈:
(しかし、)天子様のご尊顔を拝する機会も与えられないうちに、早くも遠くから楊貴妃ににらまれてしまい、妬まれて(私は)洛陽の上陽宮に密かに配属させられ、一生独り寝で過ごす身の上となったのです。
出典:
『新釈漢文大系 109 白氏文集 十三』272ページ
この巻には、「白氏文集」の索引(作品名索引・語彙索引・日本文学関連作品名索引)と全巻の総目次が収録されている。試みに「日本文学関連作品名索引」を見てみよう。
源氏物語 → 桐壺 → ①五七九(「白氏文集一」579ページの意) → 「上達女・上人なども、あいなく目を側めつつ、いとまばゆき人の御おぼえなり」
とたどることで、『源氏物語』桐壺の「上達女・上人…」の部分は該当作品「上陽白髪人」の表現を踏まえていることがわかる。該当部分を掲げた。