彭城の劉夢得は、詩の豪なる者なり。其の鋒は森然として、敢えて当たる者少し。…
本文(書き下し文):
彭城の劉夢得は、詩の豪なる者なり。其の鋒は森然として、敢えて当たる者少し。予、力を量らず。往往にして之を犯せり。夫れ応を合わす者は声同じく、争いを交ふる者は力敵す。一往一復、罷めんと欲して能わず。
読み:
ほうじょうのりゅうぼうとくは、しのごうなるものなり。そのほうはしんぜんとして、あえてあたるものすくなし。よ、ちからをはからず、おうおうにしてこれをおかせり。それおうをあわすものはこえおなじく、あらそいをまじうるものはちからてきす。いちおういちふく、やめんとほっしてあたわず。
通釈:
彭城の劉夢得は、詩の豪傑である。その矛先は鋭く並んでおり、すすんで対抗しようとする者はほとんどいなかった。私は、自分の力の程もわきまえず、しばしばこれに挑戦した。そもそも、互いに呼応せんとする者の声量は同等であり、相戦おうとする者の力量は匹敵している。だから贈られてくればまた返すという具合で、戦いをやめようにもできなかったのである。
出典:
『新釈漢文大系 106 白氏文集 十』389ページ
白居易と劉禹錫(772~842)との唱和詩を集成した『劉白唱和集』の解(序文)の冒頭部分。夢得は字。白居易とは同い年であった。元稹との間に多数の応酬詩を残してきた白居易は、55歳のとき、劉禹錫と揚州で出逢い、その後、二人の間で詩の唱和贈答が頻繁に行われた。