詩三百、一言以て之を蔽えば、曰く、「思、邪無し」と。…
本文(書き下し文):
詩三百、一言以て之を蔽えば、曰く、「思、邪無し」と。論衡は篇十を以て数うるも、亦一言なり、曰く、「虚妄を疾む」と。
読み:
しさんびゃく、いちげんもってこれをおおえば、いわく、「おもい、よこしまなし」と。ろんこうはへんじゅうをもってかぞうるも、またいちげんなり、いわく、「きょもうをにくむ」と。
通釈:
詩経三百篇の精神を、一句で言い尽くせば、「真心にあふれている」ことだ。論衡の書は数十篇から成るが、やはり一句で言い尽くせば、「虚妄を疾む」ということだ。
出典:
『新釈漢文大系 94 論衡 下』1311ページ
「佚文篇」の最後の部分。「論語」為政篇に「子曰く、詩三百、一言以て之を蔽う。曰く、思(おもい)邪(よこしま)無しと。」とある。「論衡」対作篇には、「論衡の造らるるは、衆書の並びに実を失い、虚妄の言の真美に勝つに起るなり。」(論衡の書物が書かれたのは、多くの書がみな真実から離れ、うそ・いつわりの語が真実の語以上になったことから始まった。)とあり、作者王充の強い思いが伝わってくる。