風爐は茶を煮。霜刀は瓜を割る。…
本文(書き下し文):
風爐は茶を煮。霜刀は瓜を割る。暗香微かに窗紗を透す。是池中の藕花。高く梳る髺鴉。濃く妝す瞼霞。玉尖琵琶を弾動。問う香醪飲むやと。
読み:
ふろはちゃをに。そうとうはうりをわる。あんこうかすかにそうさをとおす。これいけのはす。たかくくしけずるたぶさ。こくけわいすほほ。ゆびびわをひき。とうこうろうのむやと。
通釈:
風炉は快い音を立てて茶を煮、氷のような刃が瓜を涼しげに切る。どこからともなくよい香りがただよって来て、窓のとばり越しににおう。この香りは、折から咲いている池の蓮の花から発するものである。女は高々と髪をたばねてたぶさを櫛ですき、濃く紅お白粉で顔の化粧をする。そして白魚のような指さきで琵琶を爪びき、「お酒でも召し上がりますか。」とたずねる。
出典:
『新釈漢文大系 84 中国名詞選』149ページ
北宋の書家・画家である米芾(べいふつ。1051~1107)の作。詩文・書画、あるいは美術品の収集・鑑定に優れた能力を発揮した奇才が、日常生活の安穏さの中に一片の真実を見出している。