屈原曰く、世を挙げて皆濁りて、我独り清めり。…
本文(書き下し文):
屈原曰く、世を挙げて皆濁りて、我独り清めり。衆人皆酔ひて、我独り醒めたり。是を以て放たる、と。
読み:
くつげんいわく、よをあげてみなにごりて、われひとりすめり。しゅうじんみなよいてわれひとりさめたり。ここをもってはなたる、と。
通釈:
屈原はいう、「世間中の人々がみな濁って汚れているのに、私だけが清んで正しい。衆人はみな酔って道理がわからないのに、私だけが醒めて道を守っている。こういうわけで私は追放されたのである。」と。
出典:
『新釈漢文大系 34 楚辞』279ページ
有名な「漁父」の一節。漁父は「完爾として笑ひ」、「蹌踉の水清まば、以て我が纓を濯ふ可く、蹌踉の水濁らば、以て吾が足を濯ふべし。」と歌いながら、櫂の音も高らかに去って行く。漁父の言は老荘的な隠者の処世観を表しており、屈原はこれとは全く相容れない。