迢迢たる香鑪峯、心に存し耳目に想う。年を終わるまで物役に牽かれ、今日 方に一たび往く。
本文(書き下し文):
迢迢たる香鑪峯、心に存し耳目に想う。年を終わるまで物役に牽かれ、今日 方に一たび往く。
読み:
ちょうちょうたるこうろほう、こころにそんしじもくにおもう。としをおわるまでぶつえきにひかれ、こんにち まさにひとたびゆく。
通釈:
たかだかと聳える香炉峰については、いつも心に刻み見聞きするたび瞼に想像していたが、一年じゅう職務に拘束され、今日やっと行くことができた。
出典:
『新釈漢文大系 98 白氏文集 二上』294ページ
元和12年(817)作の「香鑪峯の頂に登る」の冒頭4句。同年、白居易は江州に左遷されている。香炉峰は江州にある廬山の北峰。形が香炉に似ている。香炉峰を詠んだ詩句で最も有名なのは、枕草子「雪のいと高う降りたるを」で引かれる「香炉峰の雪は簾を撥(かか)げて看る」(「香炉峰下、新たに山居を卜し、草堂初めて成る。偶々東壁に題す」本大系『白氏文集三』収録)であろう。