児孫の為に美田を買わず。
本文(書き下し文):
幾たびか辛酸を歴て志始めて堅し、丈夫玉砕甎全を恥ず。一家の遺事人知るや否や、児孫の為に美田を買わず。
読み:
いくたびかしんさんをへてこころざしはじめてかたし、じょうふぎょくさいせんぜんをはず。いっかのいじひとしるやいなや、じそんのためにびでんをかわず。
通釈:
幾たびか困苦艱難を歴て意志も鞏固となり、不撓不屈の精神は養われるものである。男児たるものは、たとい玉となってくだけるとも、瓦となって身の安全をはかるのを恥とするものである。わが一家の遺訓を人は知っているか、どうか。児孫のために立派な田地を買い残すことはしないのである。
出典:
『新釈漢文大系 46 日本漢詩 下』487ページ
西郷隆盛の作。この下巻には、幕末・明治期から昭和までの作品を収録している。